【2026年最新版】名古屋の私道持分がない土地は売却できる?通行・掘削承諾書が取れない場合の対処法|住宅ローン・再建築・承諾料・売却方法を徹底解説(運営:(株)愛知不動産売却センター)
はじめに|私道持分がない土地でも売却できるのか?
「自宅の前の道路が私道だった」
「長年住んでいるのに、道路の所有権が自分にはなかった」
「売却しようとしたら、私道所有者の承諾書が必要と言われた」
「私道の掘削承諾をお願いしたら、お金を要求された」
名古屋市内の古い住宅地では、このような問題が発生することがあります。
特に、相続した実家や築年数の古い戸建てを売却する際、初めて私道の権利関係が問題になるケースも珍しくありません。
これまで何十年も問題なく生活していたとしても、売却する際には買主や金融機関から、私道の通行権や掘削承諾について確認を求められる場合があります。
結論から申し上げると、私道持分がない土地でも売却は可能です。
ただし、建築基準法上の道路に接しているか、通行する権利があるか、上下水道などの掘削ができるかによって、売却の難易度は大きく変わります。
実際に当社でも、名古屋市中川区の不動産売買で、私道の掘削承諾を取得するために苦労した経験があります。
今回は、その実際の取引経験を交えながら、私道持分がない土地の売却方法、承諾書の必要性、住宅ローンへの影響、2023年施行の改正民法について詳しく解説します。
第1章|私道持分がない土地とは?
私道とは、個人や法人などが所有する道路状の土地をいいます。
道路はすべて国や地方自治体が所有しているわけではありません。
住宅地の中には、複数の住民が共有している道路や、特定の個人が所有している道路があります。
例えば、次のようなケースです。
自宅の前面道路が隣人の単独所有になっている
私道を複数人で共有しているが、自分には持分がない
道路の所有者が昔の分譲業者のままになっている
私道所有者が亡くなり、相続人が複数存在する
道路の一部だけが他人の所有地になっている
このような土地では、私道の利用に関する権利関係が重要になります。
ただし、私道持分がないことと、再建築できないことは同じではありません。
ここを混同してはいけません。
第2章|私道でも再建築できる土地はある
建築基準法では、原則として建築物の敷地は、同法上の道路に2m以上接している必要があります。
しかし、道路が私有地だからといって、必ずしも建築基準法上の道路に該当しないわけではありません。
例えば、次のような道路があります。
① 建築基準法第42条第1項第5号の位置指定道路
特定行政庁から道路の位置の指定を受けた私道です。
所定の接道条件などを満たしていれば、私道持分がなくても建築できる場合があります。
② 建築基準法第42条第2項道路
建築基準法施行時などから存在する幅員4m未満の道路で、特定行政庁が指定したものです。
一般に「2項道路」と呼ばれています。
建替え時には、セットバックが必要になる場合があります。
③ 建築基準法上の道路ではない通路
見た目は道路でも、建築基準法上の道路に該当しない場合があります。
この場合、原則として通常の接道要件を満たさず、建替えが難しくなる可能性があります。
ただし、建築基準法第43条第2項の認定・許可などによって建築できる場合もあります。
重要なのは、道路の所有者が誰かという問題と、建築基準法上の道路かどうかという問題を分けて確認することです。
第3章|実際に経験した名古屋市中川区の私道トラブル
ここからは、株式会社 愛知不動産売却センターが実際に経験した不動産売買の事例をご紹介します。
※取引関係者のプライバシーに配慮し、所在地や個人が特定される情報は伏せています。
2方向が他人所有の私道に接していた物件
以前、当社で名古屋市中川区の不動産売買を担当した際のことです。
その物件は、敷地の2方向が私道に接していました。
一見すると、道路に囲まれた利用しやすそうな土地でした。
しかし、権利関係を確認すると、接している私道について売主側に所有権がありませんでした。
不動産の売買を進めるうえで問題になったのが、私道の掘削に関する覚書の取得でした。
住宅を新築したり、上下水道などの設備を更新したりする際には、私道を掘削する必要が生じることがあります。
買主にとっては、将来の設備工事に支障がないかという点が重要です。
そこで、私道所有者に掘削に関する覚書への署名・押印をお願いすることになりました。
私道所有者が簡単には応じてくれなかった
ところが、交渉は想像以上に難航しました。
私道所有者は、覚書への押印に消極的でした。
こちらとしては、将来の上下水道工事などに備えて、必要な事項を文書で確認したいという意向でした。
しかし、私道所有者からすれば、自分の所有する土地について、他人の工事を認める書類に印鑑を押すことになります。
簡単には応じてもらえませんでした。
さらに、交渉の過程では金銭の要求もありました。
最終的には、一定の金銭負担が生じ、その費用を買主側が負担することで取引を進めることになりました。
実務で感じた私道問題の難しさ
この取引で改めて感じたのは、私道の問題は法律だけでは解決しないということです。
書類上の道路種別や所有権を調査することはもちろん重要です。
しかし、実際に私道所有者と交渉する段階では、相手方の考え方や感情も大きく影響します。
「なぜ自分が印鑑を押さなければならないのか」
「工事で道路が傷んだら誰が責任を取るのか」
「将来、別の所有者に変わった場合はどうなるのか」
このような不安を持つ方もいます。
今回の中川区の取引でも、覚書への押印を得るまでに苦労しました。
そして、最終的に買主が金銭を負担したという事実は、私道持分のない不動産を売買する難しさを示す実例だと考えています。
なお、これは当該取引における個別の交渉結果であり、私道所有者に要求された金額を法律上当然に支払う義務があったという意味ではありません。
第4章|私道の通行承諾と掘削承諾は何が違う?
私道の問題を考える際、通行と掘削は分けて考える必要があります。
私道通行承諾
私道を歩いたり、自動車で通行したりすることに関する承諾です。
私道の所有形態、道路の指定状況、通行地役権の有無、これまでの利用状況などによって、通行できる法的根拠は異なります。
建築基準法上の道路だからといって、あらゆる通行方法が無条件に認められるわけではありません。
特に、自動車通行や工事車両の通行については、トラブルになる場合があります。
私道掘削承諾
上下水道管、ガス管などを設置・交換するために、私道を掘削することに関する承諾です。
現在、住宅に水道が引き込まれていたとしても、将来の建替えや設備更新で新たな掘削が必要になる場合があります。
そのため、買主や金融機関が掘削に関する権利関係を重視することがあります。
現在生活できていることと、将来問題なく設備工事ができることは別問題です。
第5章|2023年の民法改正で私道の掘削はしやすくなった?
2023年4月1日施行の改正民法では、ライフライン設備の設置・使用に関する規定が整備されました。
重要なのが、民法第213条の2です。
この規定では、電気、ガス、水道水などの継続的な供給を受けるため、他人の土地に設備を設置したり、他人の設備を使用したりすることが必要な場合について、一定の権利が明文化されています。
私道所有者が拒否したら工事できない?
必ずしもそうではありません。
法定の要件を満たす場合、私道所有者から任意の承諾書を取得できなくても、設備の設置・使用が認められる可能性があります。
ただし、無条件に自由な工事ができるわけではありません。
設備を設置する場所や方法については、他人の土地などへの損害が最も少ないものを選ぶ必要があります。
また、原則として、目的、場所、方法などを事前に通知する必要があります。
承諾料を支払う義務はある?
ここは非常に重要です。
法務省の解説では、民法第213条の2に基づく設備設置・使用について、私道所有者から単に承諾することの対価として金銭を要求されたとしても、法律上当然に応じる義務があるわけではないとされています。
一方、工事によって実際に損害が生じた場合や、設備設置によって土地の利用が継続的に制限される場合には、法令に基づく償金が必要になることがあります。
つまり、次の2つは区別する必要があります。
承諾書に印鑑を押してもらうための金銭と、法律上認められる損害に対する償金は同じではありません。
また、民法第213条の2はライフライン設備に関する規定であり、私道のあらゆる通行や掘削について無制限の権利を認めるものではありません。
工事の種類や道路の権利関係によっては、別の法令や手続も問題になります。
第6章|法律上は掘削できても、銀行融資で問題になる理由
ここが不動産売買の実務で難しいところです。
法律上、一定の条件で設備設置権が認められる場合でも、金融機関が融資審査でどのような資料を求めるかは別問題です。
例えば、買主が住宅ローンを申し込んだとします。
金融機関が私道の権利関係を確認し、通行や掘削に関する承諾書の提出を求める場合があります。
このとき、私道所有者から承諾書を取得できていないと、融資審査に影響する可能性があります。
不動産適正取引推進機構のQ&Aでも、私道の利用や掘削に関する承諾書が銀行ローンの条件となる場合があることが紹介されています。
なぜ銀行は慎重になるのか?
金融機関は、借入希望者の返済能力だけでなく、担保となる不動産の価値や将来の処分可能性も確認します。
私道の利用をめぐって紛争がある土地は、将来売却する際にも問題が生じる可能性があります。
また、買主が住宅を建替えようとした際、設備工事が難航すれば、不動産の利用価値に影響する場合があります。
そのため、私道持分がない物件では、事前に金融機関へ道路の状況を説明しておくことが重要です。
第7章|私道所有者が承諾書への押印を拒否したら?
私道所有者から承諾書への署名・押印を拒否された場合、まず理由を確認することが重要です。
単に書類の内容が分からないのか。
工事による損傷を心配しているのか。
過去に近隣トラブルがあったのか。
金銭的な条件を求めているのか。
理由によって対応方法が異なります。
① 覚書の内容を分かりやすく説明する
掘削の目的や工事の範囲、道路の復旧方法などを明確にすることが重要です。
② 将来の所有者にも対応できる内容を検討する
現在の売主だけに認められた承諾では、買主への所有権移転後に問題が生じる可能性があります。
そのため、権利義務の承継に関する条項なども検討します。
ただし、承諾書に承継条項があるだけで、すべての将来の所有者を当然に拘束できるとは限りません。
③ 民法上の権利を確認する
民法第213条の2などの適用が考えられる場合には、弁護士などの専門家に相談する方法があります。
④ 売買条件を見直す
承諾書が取得できない場合、買主の利用目的や金融機関の条件を確認し、売買価格や契約条件を再検討することもあります。
重要なのは、承諾書が取得できないという事実を隠したまま売買を進めないことです。
第8章|私道の承諾料は売主と買主のどちらが負担する?
私道所有者との交渉で金銭の話が出た場合、売主と買主のどちらが負担するのでしょうか。
結論として、任意の承諾取得に伴う費用を売主と買主のどちらが負担するかは、原則として売買当事者間の契約条件や交渉によって決まります。
必ず売主負担になるわけでも、必ず買主負担になるわけでもありません。
例えば、売主が承諾書を取得することを契約上の義務としている場合には、その内容に従って対応する必要があります。
一方、買主が現状を了承し、自らの責任と費用で承諾取得を行う条件で購入する場合もあります。
当社が経験した名古屋市中川区の取引では、最終的に買主が一定の金銭を負担しました。
ただし、金銭の要求があった場合には、法律上支払う必要がある費用なのか、任意の交渉条件なのかを確認することが重要です。
私道所有者から金銭を要求されたからといって、無条件に支払わなければならないわけではありません。
第9章|私道持分がない土地の売却方法は3つ
① 私道の通行・掘削に関する承諾書を取得して売却する
買主にとって、将来の利用に関する不安を減らせる方法です。
住宅ローンを利用する買主に対しても、説明しやすくなる場合があります。
ただし、私道所有者の協力が必要です。
② 私道持分の取得を交渉する
私道所有者が応じる場合には、持分の一部を譲り受ける方法も考えられます。
ただし、持分を取得すればすべての通行・掘削問題が自動的に解決するわけではありません。
共有者間の権利関係なども確認する必要があります。
③ 現況のまま売却する
私道持分や承諾書がない状態を買主に説明し、現況のまま売却する方法です。
不動産買取業者などが購入を検討する場合もあります。
ただし、買主が負担するリスクが大きい場合には、価格面で調整が必要になる可能性があります。
第10章|売買契約書と重要事項説明書で注意すること
私道持分がない土地を売却する場合には、契約書と重要事項説明書の内容が重要です。
確認したい事項は次のとおりです。
前面道路の建築基準法上の種別
道路の幅員と接道状況
私道所有者と共有持分
通行に関する権利の有無
掘削承諾書の取得状況
上下水道・ガス管などの埋設状況
承諾取得に伴う費用負担
承諾書を取得できなかった場合の取扱い
特に注意したいのが、承諾書の取得を売買契約の条件とする場合です。
例えば、売主が決済日までに承諾書を取得することを約束したにもかかわらず、取得できなかった場合には、決済や契約の履行に影響する可能性があります。
そのため、取得期限、費用負担、取得できなかった場合の解除条件などを具体的に定めることが重要です。
また、契約不適合責任免責の特約を設けたとしても、私道の権利関係について説明しなくてよいわけではありません。
第11章|私道持分がない土地は査定価格が下がる?
私道持分がないという理由だけで、必ず一定割合の価格が下がるわけではありません。
しかし、買主が住宅ローンを利用しにくい場合や、将来の建替え・設備工事に不安がある場合には、売却価格に影響する可能性があります。
例えば、同じ立地・面積の土地でも、前面道路が公道で権利関係に問題のない土地と、他人所有の私道に接して承諾書も取得できていない土地では、買主の評価が異なる場合があります。
一方、通行権や設備設置に関する権利関係が整理されている場合には、売却上の不安を軽減できる可能性があります。
査定では、単純な土地面積や路線価だけでなく、実際にどのような買主が購入できるかという視点も重要です。
第12章|私道持分なし物件のよくある質問
Q1.私道持分がなくても家を建てられますか?
建築基準法上の道路種別や接道状況などによっては可能です。持分の有無だけで判断することはできません。
Q2.何十年も通行していれば通行権がありますか?
長年通行している事実は判断材料になる場合がありますが、それだけで無条件にあらゆる通行権が認められるわけではありません。
Q3.私道所有者が掘削承諾を拒否したら工事できませんか?
民法第213条の2などに基づき、一定の条件で設備設置が認められる場合があります。ただし、個別の法的確認が必要です。
Q4.私道所有者に承諾料を支払う必要がありますか?
単に承諾することの対価として、法律上当然に支払う義務があるわけではありません。ただし、損害に対する償金などが必要になる場合があります。
Q5.私道持分がないと住宅ローンは通りませんか?
必ずしもそうではありません。金融機関によって審査条件が異なり、通行・掘削に関する承諾書を求められる場合があります。
Q6.私道の所有者が亡くなっていたらどうなりますか?
相続関係の確認が必要になる場合があります。相続人が複数いる場合には、権利関係の整理に時間がかかることがあります。
Q7.承諾書がなくても不動産会社に売却できますか?
現況のまま購入を検討する不動産会社もあります。ただし、価格や条件は個別に異なります。
Q8.私道持分なし物件は再建築不可物件と同じですか?
異なります。私道持分がなくても再建築可能な場合があります。
まとめ|私道持分がない土地でも、売却方法はある
私道持分がない土地は、通常の不動産より売却に手間がかかる場合があります。
しかし、私道持分がないという理由だけで、売却できないわけではありません。
重要なのは、道路の種別、通行権、掘削に関する権利関係を確認することです。
また、私道所有者との交渉では、法律上の問題だけでなく、相手方との関係や費用負担が問題になることもあります。
当社が名古屋市中川区で経験した取引でも、2方向が他人所有の私道に接する物件について、掘削の覚書を取得するまでに苦労しました。
私道所有者は押印に消極的で、金銭の要求もあり、最終的には買主が一定の費用を負担することになりました。
こうした問題は、登記事項証明書や公図を確認するだけでは解決できません。
実際の売買では、私道所有者との交渉、買主の資金計画、金融機関の融資条件、売買契約の内容などを総合的に調整する必要があります。
私道持分がない土地は、権利関係を整理することで売却の可能性が広がります。
売却を諦める前に、私道の問題に対応できる不動産会社へ相談することが重要です。
名古屋の私道持分なし・訳あり土地の売却相談なら名古屋仏縁不動産へ
名古屋仏縁不動産では、名古屋市を中心に、一般的な不動産会社では取扱いが難しい土地や建物の売却相談に対応しています。
私道持分がない土地。
私道の通行承諾が取得できない土地。
掘削承諾書への押印を拒否されている土地。
私道所有者が複数存在する土地。
再建築不可物件や接道条件に問題がある土地。
相続した古い実家や、長期間売却できていない不動産。
このような不動産についても、現況売却や買取など、状況に応じた売却方法を検討します。
「私道の所有者に話をするのが難しい」
「掘削承諾書を取得できず困っている」
「他社で売却が難しいと言われた」
そのような段階でも、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年11月時点の法令および一般的な不動産売買実務に基づいて作成しています。私道の通行権、設備設置権、承諾料、契約条件などは個別の権利関係によって異なります。具体的な法的判断については弁護士等の専門家にご確認ください。
「自宅の前の道路が私道だった」
「長年住んでいるのに、道路の所有権が自分にはなかった」
「売却しようとしたら、私道所有者の承諾書が必要と言われた」
「私道の掘削承諾をお願いしたら、お金を要求された」
名古屋市内の古い住宅地では、このような問題が発生することがあります。
特に、相続した実家や築年数の古い戸建てを売却する際、初めて私道の権利関係が問題になるケースも珍しくありません。
これまで何十年も問題なく生活していたとしても、売却する際には買主や金融機関から、私道の通行権や掘削承諾について確認を求められる場合があります。
結論から申し上げると、私道持分がない土地でも売却は可能です。
ただし、建築基準法上の道路に接しているか、通行する権利があるか、上下水道などの掘削ができるかによって、売却の難易度は大きく変わります。
実際に当社でも、名古屋市中川区の不動産売買で、私道の掘削承諾を取得するために苦労した経験があります。
今回は、その実際の取引経験を交えながら、私道持分がない土地の売却方法、承諾書の必要性、住宅ローンへの影響、2023年施行の改正民法について詳しく解説します。
第1章|私道持分がない土地とは?
私道とは、個人や法人などが所有する道路状の土地をいいます。
道路はすべて国や地方自治体が所有しているわけではありません。
住宅地の中には、複数の住民が共有している道路や、特定の個人が所有している道路があります。
例えば、次のようなケースです。
自宅の前面道路が隣人の単独所有になっている
私道を複数人で共有しているが、自分には持分がない
道路の所有者が昔の分譲業者のままになっている
私道所有者が亡くなり、相続人が複数存在する
道路の一部だけが他人の所有地になっている
このような土地では、私道の利用に関する権利関係が重要になります。
ただし、私道持分がないことと、再建築できないことは同じではありません。
ここを混同してはいけません。
第2章|私道でも再建築できる土地はある
建築基準法では、原則として建築物の敷地は、同法上の道路に2m以上接している必要があります。
しかし、道路が私有地だからといって、必ずしも建築基準法上の道路に該当しないわけではありません。
例えば、次のような道路があります。
① 建築基準法第42条第1項第5号の位置指定道路
特定行政庁から道路の位置の指定を受けた私道です。
所定の接道条件などを満たしていれば、私道持分がなくても建築できる場合があります。
② 建築基準法第42条第2項道路
建築基準法施行時などから存在する幅員4m未満の道路で、特定行政庁が指定したものです。
一般に「2項道路」と呼ばれています。
建替え時には、セットバックが必要になる場合があります。
③ 建築基準法上の道路ではない通路
見た目は道路でも、建築基準法上の道路に該当しない場合があります。
この場合、原則として通常の接道要件を満たさず、建替えが難しくなる可能性があります。
ただし、建築基準法第43条第2項の認定・許可などによって建築できる場合もあります。
重要なのは、道路の所有者が誰かという問題と、建築基準法上の道路かどうかという問題を分けて確認することです。
第3章|実際に経験した名古屋市中川区の私道トラブル
ここからは、株式会社 愛知不動産売却センターが実際に経験した不動産売買の事例をご紹介します。
※取引関係者のプライバシーに配慮し、所在地や個人が特定される情報は伏せています。
2方向が他人所有の私道に接していた物件
以前、当社で名古屋市中川区の不動産売買を担当した際のことです。
その物件は、敷地の2方向が私道に接していました。
一見すると、道路に囲まれた利用しやすそうな土地でした。
しかし、権利関係を確認すると、接している私道について売主側に所有権がありませんでした。
不動産の売買を進めるうえで問題になったのが、私道の掘削に関する覚書の取得でした。
住宅を新築したり、上下水道などの設備を更新したりする際には、私道を掘削する必要が生じることがあります。
買主にとっては、将来の設備工事に支障がないかという点が重要です。
そこで、私道所有者に掘削に関する覚書への署名・押印をお願いすることになりました。
私道所有者が簡単には応じてくれなかった
ところが、交渉は想像以上に難航しました。
私道所有者は、覚書への押印に消極的でした。
こちらとしては、将来の上下水道工事などに備えて、必要な事項を文書で確認したいという意向でした。
しかし、私道所有者からすれば、自分の所有する土地について、他人の工事を認める書類に印鑑を押すことになります。
簡単には応じてもらえませんでした。
さらに、交渉の過程では金銭の要求もありました。
最終的には、一定の金銭負担が生じ、その費用を買主側が負担することで取引を進めることになりました。
実務で感じた私道問題の難しさ
この取引で改めて感じたのは、私道の問題は法律だけでは解決しないということです。
書類上の道路種別や所有権を調査することはもちろん重要です。
しかし、実際に私道所有者と交渉する段階では、相手方の考え方や感情も大きく影響します。
「なぜ自分が印鑑を押さなければならないのか」
「工事で道路が傷んだら誰が責任を取るのか」
「将来、別の所有者に変わった場合はどうなるのか」
このような不安を持つ方もいます。
今回の中川区の取引でも、覚書への押印を得るまでに苦労しました。
そして、最終的に買主が金銭を負担したという事実は、私道持分のない不動産を売買する難しさを示す実例だと考えています。
なお、これは当該取引における個別の交渉結果であり、私道所有者に要求された金額を法律上当然に支払う義務があったという意味ではありません。
第4章|私道の通行承諾と掘削承諾は何が違う?
私道の問題を考える際、通行と掘削は分けて考える必要があります。
私道通行承諾
私道を歩いたり、自動車で通行したりすることに関する承諾です。
私道の所有形態、道路の指定状況、通行地役権の有無、これまでの利用状況などによって、通行できる法的根拠は異なります。
建築基準法上の道路だからといって、あらゆる通行方法が無条件に認められるわけではありません。
特に、自動車通行や工事車両の通行については、トラブルになる場合があります。
私道掘削承諾
上下水道管、ガス管などを設置・交換するために、私道を掘削することに関する承諾です。
現在、住宅に水道が引き込まれていたとしても、将来の建替えや設備更新で新たな掘削が必要になる場合があります。
そのため、買主や金融機関が掘削に関する権利関係を重視することがあります。
現在生活できていることと、将来問題なく設備工事ができることは別問題です。
第5章|2023年の民法改正で私道の掘削はしやすくなった?
2023年4月1日施行の改正民法では、ライフライン設備の設置・使用に関する規定が整備されました。
重要なのが、民法第213条の2です。
この規定では、電気、ガス、水道水などの継続的な供給を受けるため、他人の土地に設備を設置したり、他人の設備を使用したりすることが必要な場合について、一定の権利が明文化されています。
私道所有者が拒否したら工事できない?
必ずしもそうではありません。
法定の要件を満たす場合、私道所有者から任意の承諾書を取得できなくても、設備の設置・使用が認められる可能性があります。
ただし、無条件に自由な工事ができるわけではありません。
設備を設置する場所や方法については、他人の土地などへの損害が最も少ないものを選ぶ必要があります。
また、原則として、目的、場所、方法などを事前に通知する必要があります。
承諾料を支払う義務はある?
ここは非常に重要です。
法務省の解説では、民法第213条の2に基づく設備設置・使用について、私道所有者から単に承諾することの対価として金銭を要求されたとしても、法律上当然に応じる義務があるわけではないとされています。
一方、工事によって実際に損害が生じた場合や、設備設置によって土地の利用が継続的に制限される場合には、法令に基づく償金が必要になることがあります。
つまり、次の2つは区別する必要があります。
承諾書に印鑑を押してもらうための金銭と、法律上認められる損害に対する償金は同じではありません。
また、民法第213条の2はライフライン設備に関する規定であり、私道のあらゆる通行や掘削について無制限の権利を認めるものではありません。
工事の種類や道路の権利関係によっては、別の法令や手続も問題になります。
第6章|法律上は掘削できても、銀行融資で問題になる理由
ここが不動産売買の実務で難しいところです。
法律上、一定の条件で設備設置権が認められる場合でも、金融機関が融資審査でどのような資料を求めるかは別問題です。
例えば、買主が住宅ローンを申し込んだとします。
金融機関が私道の権利関係を確認し、通行や掘削に関する承諾書の提出を求める場合があります。
このとき、私道所有者から承諾書を取得できていないと、融資審査に影響する可能性があります。
不動産適正取引推進機構のQ&Aでも、私道の利用や掘削に関する承諾書が銀行ローンの条件となる場合があることが紹介されています。
なぜ銀行は慎重になるのか?
金融機関は、借入希望者の返済能力だけでなく、担保となる不動産の価値や将来の処分可能性も確認します。
私道の利用をめぐって紛争がある土地は、将来売却する際にも問題が生じる可能性があります。
また、買主が住宅を建替えようとした際、設備工事が難航すれば、不動産の利用価値に影響する場合があります。
そのため、私道持分がない物件では、事前に金融機関へ道路の状況を説明しておくことが重要です。
第7章|私道所有者が承諾書への押印を拒否したら?
私道所有者から承諾書への署名・押印を拒否された場合、まず理由を確認することが重要です。
単に書類の内容が分からないのか。
工事による損傷を心配しているのか。
過去に近隣トラブルがあったのか。
金銭的な条件を求めているのか。
理由によって対応方法が異なります。
① 覚書の内容を分かりやすく説明する
掘削の目的や工事の範囲、道路の復旧方法などを明確にすることが重要です。
② 将来の所有者にも対応できる内容を検討する
現在の売主だけに認められた承諾では、買主への所有権移転後に問題が生じる可能性があります。
そのため、権利義務の承継に関する条項なども検討します。
ただし、承諾書に承継条項があるだけで、すべての将来の所有者を当然に拘束できるとは限りません。
③ 民法上の権利を確認する
民法第213条の2などの適用が考えられる場合には、弁護士などの専門家に相談する方法があります。
④ 売買条件を見直す
承諾書が取得できない場合、買主の利用目的や金融機関の条件を確認し、売買価格や契約条件を再検討することもあります。
重要なのは、承諾書が取得できないという事実を隠したまま売買を進めないことです。
第8章|私道の承諾料は売主と買主のどちらが負担する?
私道所有者との交渉で金銭の話が出た場合、売主と買主のどちらが負担するのでしょうか。
結論として、任意の承諾取得に伴う費用を売主と買主のどちらが負担するかは、原則として売買当事者間の契約条件や交渉によって決まります。
必ず売主負担になるわけでも、必ず買主負担になるわけでもありません。
例えば、売主が承諾書を取得することを契約上の義務としている場合には、その内容に従って対応する必要があります。
一方、買主が現状を了承し、自らの責任と費用で承諾取得を行う条件で購入する場合もあります。
当社が経験した名古屋市中川区の取引では、最終的に買主が一定の金銭を負担しました。
ただし、金銭の要求があった場合には、法律上支払う必要がある費用なのか、任意の交渉条件なのかを確認することが重要です。
私道所有者から金銭を要求されたからといって、無条件に支払わなければならないわけではありません。
第9章|私道持分がない土地の売却方法は3つ
① 私道の通行・掘削に関する承諾書を取得して売却する
買主にとって、将来の利用に関する不安を減らせる方法です。
住宅ローンを利用する買主に対しても、説明しやすくなる場合があります。
ただし、私道所有者の協力が必要です。
② 私道持分の取得を交渉する
私道所有者が応じる場合には、持分の一部を譲り受ける方法も考えられます。
ただし、持分を取得すればすべての通行・掘削問題が自動的に解決するわけではありません。
共有者間の権利関係なども確認する必要があります。
③ 現況のまま売却する
私道持分や承諾書がない状態を買主に説明し、現況のまま売却する方法です。
不動産買取業者などが購入を検討する場合もあります。
ただし、買主が負担するリスクが大きい場合には、価格面で調整が必要になる可能性があります。
第10章|売買契約書と重要事項説明書で注意すること
私道持分がない土地を売却する場合には、契約書と重要事項説明書の内容が重要です。
確認したい事項は次のとおりです。
前面道路の建築基準法上の種別
道路の幅員と接道状況
私道所有者と共有持分
通行に関する権利の有無
掘削承諾書の取得状況
上下水道・ガス管などの埋設状況
承諾取得に伴う費用負担
承諾書を取得できなかった場合の取扱い
特に注意したいのが、承諾書の取得を売買契約の条件とする場合です。
例えば、売主が決済日までに承諾書を取得することを約束したにもかかわらず、取得できなかった場合には、決済や契約の履行に影響する可能性があります。
そのため、取得期限、費用負担、取得できなかった場合の解除条件などを具体的に定めることが重要です。
また、契約不適合責任免責の特約を設けたとしても、私道の権利関係について説明しなくてよいわけではありません。
第11章|私道持分がない土地は査定価格が下がる?
私道持分がないという理由だけで、必ず一定割合の価格が下がるわけではありません。
しかし、買主が住宅ローンを利用しにくい場合や、将来の建替え・設備工事に不安がある場合には、売却価格に影響する可能性があります。
例えば、同じ立地・面積の土地でも、前面道路が公道で権利関係に問題のない土地と、他人所有の私道に接して承諾書も取得できていない土地では、買主の評価が異なる場合があります。
一方、通行権や設備設置に関する権利関係が整理されている場合には、売却上の不安を軽減できる可能性があります。
査定では、単純な土地面積や路線価だけでなく、実際にどのような買主が購入できるかという視点も重要です。
第12章|私道持分なし物件のよくある質問
Q1.私道持分がなくても家を建てられますか?
建築基準法上の道路種別や接道状況などによっては可能です。持分の有無だけで判断することはできません。
Q2.何十年も通行していれば通行権がありますか?
長年通行している事実は判断材料になる場合がありますが、それだけで無条件にあらゆる通行権が認められるわけではありません。
Q3.私道所有者が掘削承諾を拒否したら工事できませんか?
民法第213条の2などに基づき、一定の条件で設備設置が認められる場合があります。ただし、個別の法的確認が必要です。
Q4.私道所有者に承諾料を支払う必要がありますか?
単に承諾することの対価として、法律上当然に支払う義務があるわけではありません。ただし、損害に対する償金などが必要になる場合があります。
Q5.私道持分がないと住宅ローンは通りませんか?
必ずしもそうではありません。金融機関によって審査条件が異なり、通行・掘削に関する承諾書を求められる場合があります。
Q6.私道の所有者が亡くなっていたらどうなりますか?
相続関係の確認が必要になる場合があります。相続人が複数いる場合には、権利関係の整理に時間がかかることがあります。
Q7.承諾書がなくても不動産会社に売却できますか?
現況のまま購入を検討する不動産会社もあります。ただし、価格や条件は個別に異なります。
Q8.私道持分なし物件は再建築不可物件と同じですか?
異なります。私道持分がなくても再建築可能な場合があります。
まとめ|私道持分がない土地でも、売却方法はある
私道持分がない土地は、通常の不動産より売却に手間がかかる場合があります。
しかし、私道持分がないという理由だけで、売却できないわけではありません。
重要なのは、道路の種別、通行権、掘削に関する権利関係を確認することです。
また、私道所有者との交渉では、法律上の問題だけでなく、相手方との関係や費用負担が問題になることもあります。
当社が名古屋市中川区で経験した取引でも、2方向が他人所有の私道に接する物件について、掘削の覚書を取得するまでに苦労しました。
私道所有者は押印に消極的で、金銭の要求もあり、最終的には買主が一定の費用を負担することになりました。
こうした問題は、登記事項証明書や公図を確認するだけでは解決できません。
実際の売買では、私道所有者との交渉、買主の資金計画、金融機関の融資条件、売買契約の内容などを総合的に調整する必要があります。
私道持分がない土地は、権利関係を整理することで売却の可能性が広がります。
売却を諦める前に、私道の問題に対応できる不動産会社へ相談することが重要です。
名古屋の私道持分なし・訳あり土地の売却相談なら名古屋仏縁不動産へ
名古屋仏縁不動産では、名古屋市を中心に、一般的な不動産会社では取扱いが難しい土地や建物の売却相談に対応しています。
私道持分がない土地。
私道の通行承諾が取得できない土地。
掘削承諾書への押印を拒否されている土地。
私道所有者が複数存在する土地。
再建築不可物件や接道条件に問題がある土地。
相続した古い実家や、長期間売却できていない不動産。
このような不動産についても、現況売却や買取など、状況に応じた売却方法を検討します。
「私道の所有者に話をするのが難しい」
「掘削承諾書を取得できず困っている」
「他社で売却が難しいと言われた」
そのような段階でも、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年11月時点の法令および一般的な不動産売買実務に基づいて作成しています。私道の通行権、設備設置権、承諾料、契約条件などは個別の権利関係によって異なります。具体的な法的判断については弁護士等の専門家にご確認ください。
修繕する前に。壊す前に。まず査定を。
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